ミドリムシという微生物がいます。
右図は遊泳している時の周りの流れの様子を可視化したものです.(ミドリムシは中央で横になっていて,右に泳いでいます
前後には胴体に向かう流れ,上下には胴体から離れる方向の流れができています.ミドリムシはしばしば運動方向を変えて及びますが,その様は単純なブラウン運動ではありません.
この微生物を 1mL 当たり 100,000 匹ほど集めて下から光を当てると生物対流というパターンが出来ます.おもしろいのはこのパターンが局在構造を持つことです.
我々は,局在構造の基本構造を抽出したり[1],局在する機構について研究を行っています.これらの結果はこの現象の流体力学的モデルの基礎となるものです.
局在機構として,我々はミドリムシが光強度の勾配に応答して運動すると予想し,それが正しいことを実験により初めて定量的に明らかにしました[2].眩しいので,仲間の陰に隠れるように運動した結果,局在生物対流構造ができる,というわけです.
- E. Shoji, H. Nishimori, A. Awazu, S. Izumi and M. Iima, “Localized bioconvection patterns and their initial state dependency in Euglena gracilis in an annular container”, J. Phys. Soc. Jpn, 83 (2014) 043001
- T. Ogawa, E. Shoji, N. J. Suematsu, H. Nishimori, S. Izumi and M. Iima, “The flux of Euglena gracilis cells depends on the gradient of light intensity,” PLoS ONE,11 (2016) e0168114. doi: 10.1371/journal.pone.0168114. (Open Access)
新しい局在生物対流の基本構造を制御することもできるようになりました。
時間変化する暗・明領域をもつ光環境を用意することで、ミドリムシを任意の位置に集中させることに成功しました。右の動画のような生物対流パターンを形成する基本構造(緑の斑点)は、単独でも存在できることが明らかとなりました。