我々は生命現象を模倣するという観点から,流体力学と結合した非平衡パターン形成現象に着目し,実験的な研究を行ってきた。本講演では,非生物材料を用いた実験系を中心に,これまでの研究を紹介する。
まず,化学反応によって凝集が生じる系において,溶液注入時に誘起される界面パターンについて紹介する。この系では,注入先端が固化することで溶液の進展が阻止され,自発的に樹枝状パターンが形成されることが知られている。我々は,この樹枝状パターンのダイナミクスが,セル内に設けた構造によって制御できることを見いだした。こうしたダイナミクスは,界面のみを記述した数理モデルによって説明できる(Tanaka, Otoguro, … , YS, Phys. Rev. E 2024; https://doi.org/10.1103/PhysRevE.109.065105)。一方で,流体場を陽に取り入れた記述は今後の課題である。この点についても,講演を通じてご議論いただきたい。
続いて,電気浸透流によって駆動されるコロイド粒子系について紹介する。この系は,サイズの異なる2種類のポリスチレン粒子を水相中に分散させたものであり,外部電場を印加すると,各粒子の周囲に粒子へ向かう電気浸透流が形成される。この粒子間相互作用によって,多彩な集団運動が生じる。我々は,粒子間の電気浸透流による相互作用を,作用・反作用の法則が見かけ上破れた非相反相互作用としてモデル化することで,実験で観察される集団運動を再現できることを明らかにした(Hara, … YS, Phys. Rev. Lett in press; https://arxiv.org/abs/2509.23164)。この研究でも,電気浸透流そのものを陽に取り入れた流体記述には至っておらず,今後の発展についてもご議論いただければ幸いである。