日程: 2023年10月25日(水)〜27日(金)

場所: 京都大学数理解析研究所111号室

今年度の生物流体研究集会では、例年の研究集会に加え、英国立ニュートン研究所(INI, Cambridge)と京都大学数理解析研究所(RIMS)の合同セミナーを実施します。合同セミナーのスケジュール・内容はこちら

お知らせ

  • 参加登録された方には懇親会の出欠確認の連絡をお送りしております(10/11)
  • 講演言語はINI-RIMS合同セミナーでは英語、それ以外は日本語です(10/11)
  • プログラムが完成しました(10/6)
  • 講演者の方にプログラム案を送りました。また、旅費を希望された方には何らかの連絡が届いているかと思います(修士学生の方は指導教員に問い合わせてください)(10/4)
  • MLでご連絡した日程の最終日がおかしかったようです。正しくは本websiteの通りですのでよろしくお願いします(8/23)
  • 統合講演の先生が決まりました(7/27)

参加申し込みはこちらからお願いします (講演申し込みは締め切りました。参加ご希望の方[INI-RIMS共同セミナー参加の方を含む]は引き続きご登録をお願いします)

統合講演

百武 徹 先生 (横浜国立大学大学院工学研究院 教授)

受精環境を模したレオロジー流体中における精子の運動特性

Abstract
動物の生殖において,精子が卵子に向かう現象は受精を成功させるために重要な因子の1つである.特に哺乳類は体内受精を行うため,膣内で射精された多数の精子は,細長い鞭毛を能動的に屈曲させながら,卵子を目指して複雑な構造を有する女性生殖器内を推進しなければならない.卵子に到達するまでの遊泳距離は精子自身の大きさの数千倍に達し,その間に様々な物理的・化学的影響を受ける.しかしながら,現象が複雑であるがゆえに,生殖細胞が受精に至るまでのプロセスについてまだ十分に解明されているとは言い難い.一般的に精子運動の観察は,体外受精で用いる媒精液のように水に近いレオロジー環境下で行うことが多い.しかしながら,実際に精子が遊泳する子宮頚管から卵管にかけての粘液は水に比べて非常に高粘性の流体であり,かつ様々な高分子化合物などを含んでいるため,粘度がせん断速度に応じて低下するShear thinning流体である.さらには粘弾性特性も有している.このような流体中を,精子は走流性や走触性といった特徴的な性質を利用することで,卵管蠕動による流れの影響を受けながら卵子に向かって遊泳していると考えられる.そこで本講演では,受精環境を模した高粘度かつ弾性を有するレオロジー流体中を遊泳する牛精子の運動特性に関するいくつかの研究例を紹介する.

種子田 春彦 先生 (東京大学大学院理学系研究科 准教授)

植物の物質輸送を支える流れの話

Abstract
植物には、動物と大きく異なる特徴が数多くある。例えば、植物は根を張った土地から動けない固着性をもち、地上には茎を無数に伸ばすが、これらは手のように能動的に動かせない。また、木本植物では体長が数十メートルを超える巨大なサイズの個体になる。こうした特徴をもつ植物にとって「流れ」は、風や水流のように力学的なストレスとして作用する要素であると同時に、植物の内外や植物の体内で、成長や生存に必要な物質を運ぶ媒体としても機能する。この物質を運ぶ媒体としての流れを有効に利用することで、植物は体を動かすことなく資源を獲得し、大きなサイズの体を維持できているといっても過言ではない。葉では、気孔という表面にある小孔を開いて湿った葉の内部からは乾いた大気に向けて水蒸気が移動する(蒸散)が、同時に大気から拡散によってCO2を葉内に取り込み、光合成で固定される。光合成でつくられた炭水化物は、毎時 数十cm程度の速度で師管という細長い細胞を通る溶液の流れにのって植物の体の隅々にまで移動し、器官の生存や成長を支える。さらに蒸散によって失った水は、土壌から根で吸収されて道管という細長い細胞を通って毎時 数m程度の速度で葉へ供給され、気孔を通したCO2の取り込み維持している。本講演では、こうした植物の流れがつくられる生理学的な仕組みや、それにともなって獲得した適応的な性質や形態についての研究例を紹介する。

組織委員
飯間信(広島大院統合生命)
鈴木康佑(信州大学)
山下博士(広島大院統合生命)
藤田雄介(広島大院統合生命)

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